新潮流 攻めるベンチャー 菅尾工業
長引く不況による投資の減少で、建設関連産業はど こも厳しい環境に置かれている。受注競争は激しく、 発注者側の建設コストに対する要求は厳しい。 セメント二次製品製造・販売の菅尾工業(修善寺町、菅尾信一 社長)は軟弱な地盤を補強、沈下を防ぐ新工法「SGべ−ス」 を開発、競争を乗りきるための武器にしよ うとしている。
◆軟弱地盤、新工法で補強◆ 工期短縮に有効
SGベースはまず、地盤が軟弱な地域の地面を堀
り、リサイクルされた、再生発泡スチロールの粉末を混ぜ
たコンクリートで作ったブロックを埋める。プロック
の上に砕石を乗せ、下水道や水路の管などをその上に置いて埋める。
フロックの重さは、サイズにより80キロ〜300キロ、
と通常のコンクリートの約半分で、水に浮くなど軽い。
この浮力を利川して地盤の沈下を防ぐ。排水マンホー
ル、道路側溝などの比較的小規模な工事に有効と見ている。
地盤の軟弱な地域では、埋めた水路管などが地盤沈
下で縦にでこぼこに折れ曲がってしまうなどの被害が
出るケースがある。同社はSGベースについて、すで
に沼津市内などでテストを行い、効果が得られたとし
て、工法の採用を始めた。8〜10bの深さまで杭(く
い)を打ち込み補強する従来の工法に比べ、工事費が約
半分、工期の短縮にもつながると見ている。
◆受注目標は年10億円◆
景気低迷による民間需要の低迷もあり、同社の売り
上げの約95%は公共事業が占める。その一方で、受注
競争の激化で発注単価も低下している。
県内では、沼津市などに地盤の悪い地域があり、軟弱
地盤対策は地元の公共工事に携わる会社として重要だた。
公共事業にコストダウンが求められている中で新
工法を武器に受注拡大を目指す考え。
年間約10億円の受注を目指している。
◆技術開発で新たな顧客獲得◆ 利益率は低迷続く
バブル崩壊後の不況で、同社の売り上げはピークの
91年ごろに比べて1割程度減少した。
受注単価も20〜30%減と
厳しい状況で利益率も低下した。たとえ景気が回復したとしても、
競争の本格化などで建設関連業界を取り巻く状況
の厳しさは今後も変わらないと見られている。
菅尾社長は生き残りのかぎとして「これまでの顧客
だけに頼らず、自社ならではの製品を出して新しい顧客
を獲得できるかどうかが重要」と見る。今後も新技
術の開発に力を入れ、生き残りをはかる方針だ。
◆会社プロフィール◆ 景気テコ入れ策「恩恵は少なく」
菅尾工業の設立は78年。菅尾社長は当時、菅尾
運送というトラック運送の会社を経営していた
が、同社の顧客だった焼却炉メーカーから製造の
手伝いを要請されコンクリート製品の生産を手がけ
るようになった。 「最初は家内工業のようなもの
だった」(菅尾社長)というが、好景気となった
87年ごろには軌道に乗るようになった。現在3つの工場
を持ち従業員は約30人。
バブル崩壊後の不況で
同社の売り上げ、単価ともに落ち込み、厳しい状
況が続いている。景気テコ入れの
景気対策も「恩恵は少ない」とあまり期待をかけられない状況だ。
「自社オリジナルの製品を出して受注を取りた
い」と、自助努力で不況を乗り切りたい考えだ。