1999年(平成11年)7月8日 日本経済新聞

新聞記事 新潮流 攻めるベンチャー 菅尾工業

長引く不況による投資の減少で、建設関連産業はど こも厳しい環境に置かれている。受注競争は激しく、 発注者側の建設コストに対する要求は厳しい。 セメント二次製品製造・販売の菅尾工業(修善寺町、菅尾信一 社長)は軟弱な地盤を補強、沈下を防ぐ新工法「SGべ−ス」 を開発、競争を乗りきるための武器にしよ うとしている。

◆軟弱地盤、新工法で補強◆ 工期短縮に有効
SGベースはまず、地盤が軟弱な地域の地面を堀 り、リサイクルされた、再生発泡スチロールの粉末を混ぜ たコンクリートで作ったブロックを埋める。プロック の上に砕石を乗せ、下水道や水路の管などをその上に置いて埋める。 フロックの重さは、サイズにより80キロ〜300キロ、 と通常のコンクリートの約半分で、水に浮くなど軽い。 この浮力を利川して地盤の沈下を防ぐ。排水マンホー ル、道路側溝などの比較的小規模な工事に有効と見ている。 地盤の軟弱な地域では、埋めた水路管などが地盤沈 下で縦にでこぼこに折れ曲がってしまうなどの被害が 出るケースがある。同社はSGベースについて、すで に沼津市内などでテストを行い、効果が得られたとし て、工法の採用を始めた。8〜10bの深さまで杭(く い)を打ち込み補強する従来の工法に比べ、工事費が約 半分、工期の短縮にもつながると見ている。

◆受注目標は年10億円◆
景気低迷による民間需要の低迷もあり、同社の売り 上げの約95%は公共事業が占める。その一方で、受注 競争の激化で発注単価も低下している。 県内では、沼津市などに地盤の悪い地域があり、軟弱 地盤対策は地元の公共工事に携わる会社として重要だた。 公共事業にコストダウンが求められている中で新 工法を武器に受注拡大を目指す考え。 年間約10億円の受注を目指している。

◆技術開発で新たな顧客獲得◆ 利益率は低迷続く
バブル崩壊後の不況で、同社の売り上げはピークの 91年ごろに比べて1割程度減少した。 受注単価も20〜30%減と 厳しい状況で利益率も低下した。たとえ景気が回復したとしても、 競争の本格化などで建設関連業界を取り巻く状況 の厳しさは今後も変わらないと見られている。 菅尾社長は生き残りのかぎとして「これまでの顧客 だけに頼らず、自社ならではの製品を出して新しい顧客 を獲得できるかどうかが重要」と見る。今後も新技 術の開発に力を入れ、生き残りをはかる方針だ。

◆会社プロフィール◆ 景気テコ入れ策「恩恵は少なく」
菅尾工業の設立は78年。菅尾社長は当時、菅尾 運送というトラック運送の会社を経営していた が、同社の顧客だった焼却炉メーカーから製造の 手伝いを要請されコンクリート製品の生産を手がけ るようになった。 「最初は家内工業のようなもの だった」(菅尾社長)というが、好景気となった 87年ごろには軌道に乗るようになった。現在3つの工場 を持ち従業員は約30人。 バブル崩壊後の不況で 同社の売り上げ、単価ともに落ち込み、厳しい状 況が続いている。景気テコ入れの 景気対策も「恩恵は少ない」とあまり期待をかけられない状況だ。 「自社オリジナルの製品を出して受注を取りた い」と、自助努力で不況を乗り切りたい考えだ。




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